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株式会社アルファ・テン 顧問社会保険労務士 : 「齋藤 順孝」 |
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4月、日曜9時からフジテレビ系で放送されていた『マルモのおきて』見たことありますか?
双子の小学1年生が、突然父親を亡くし、野球のバッテリーを組んでいたという親友のまもるにひきとられ、さらに、人間語をたまにしゃべるという犬も加わり4人家族となり、周りの人達を巻き込んで成長していく、ほのぼのホームドラマです。
二人は3歳の時に母親が育児ノイローゼで家を出てしまい、それから男手ひとつで育てられてきました。その父親もガンで亡くなってしまい、別々に親戚にひきとられることになるのですが、「ふたりはいつも一緒にいたい」という双子の願いを聞き届けるため、親友のまもるがひきとることになるのです。
独身30男のまもるが、いきなりふたりの子供の父親になるのですから、そのてんやわんやぶりがとてもほほえましく楽しいドラマです。 |
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株式会社アルファ・テン 新入社員 : 「新井 翔太」 |
はい、あの双子のダンスがかわいいと評判のドラマですね。 |
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社労士 : 「齋藤」 |
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もしあなたがドラマのマモルのように突然二人の子供をひきとることになったらどうでしょうか? |
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新入社員 : 「翔太」 |
まずは、家族が増えるわけですから、食費や衣服、文具などの備品にもおカネがかかりますよね。それも二人ですから2倍も・・・。さらに教育費もかかってくることでしょう。僕もいくらかわいくても、現実的に考えると経済的負担が大き過ぎて無理です。だから親戚のひとたちも二人を別々にひきとろうとしたのでしょう? |
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社労士 : 「齋藤」 |
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では、経済的な理由で二人は別々に暮らさなければならないのでしょうか?両親に去られ、今またかけがえのない双子の兄弟とも大人の都合で離ればなれになってしまうなんて、本当に可哀そうですよね・・・。 |
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新入社員 : 「翔太」 |
僕だってなんとかしてあげたいけど・・・。先立つものはおカネでしょ。 |
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社労士 : 「齋藤」 |
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本当に二人の生活費はないのでしょうか?二人は他の人の情けだけにすがって生きるしか道はないのでしょうか?ここで、社会保障制度の中の遺族年金のお話しをしましょう。 |
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新入社員 : 「翔太」 |
遺族年金ですか・・・? |
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社労士 : 「齋藤」 |
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はい。父親を亡くした二人には母親はいません。(離婚している)
まずは、生命保険や不動産などの財産があれば、二人は相続できます。
では、財産がなかったら、二人の養育費の負担はすべてマモルのお給料で負担しなければならないのでしょうか? |
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新入社員 : 「翔太」 |
もし、父親に個人の生命保険や財産がなかったら、仕方が無いですよね。 |
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社労士 : 「齋藤」 |
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答えは『いいえ』です。二人の父親は会社員のようでした。つまり、厚生年金の被保険者であったとすると、被保険者(現役)の死亡は遺族である双子に対して、遺族厚生年金(25年務めたとみなして計算)と遺族基礎年金が18歳の3月31日まで支払われます。
双子の父親が3月に亡くなったとして、その翌月から遺族年金がもらえます。18歳の3月末日までと言うことは、二人が高校卒業までの12年間支給されます。 |
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新入社員 : 「翔太」 |
12年間も・・・。高校卒業までなんて、そのころには二人とも立派な大人ですよね。安心ですね。でも金額は? |
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社労士 : 「齋藤」 |
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遺族厚生年金は父親の給料やボーナスより計算されます。
例えば、父親が死亡時32歳、給与32万円。ボーナス120万円くらいですと、
遺族厚生年金は年間514,100万円(計算省略)、遺族基礎年金は子供2人の場合年間1,015,900円(定額)で合計約153万円。12年間ですから、計1836万円がふたりに支給されます。(物価変動あり) |
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新入社員 : 「翔太」 |
それならば、生活費はあまり心配はいらないですね。 |
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社労士 : 「齋藤」 |
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そうですね。二人を引き取るのはとてもたいへんなことですが、少なくとも生活費や教育費に関しては、まるまる負担を負うことはありません。公的な年金はありがたいですよね。 |
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新入社員 : 「翔太」 |
そういえば、双子の母親が登場してきましたが、母親にひきとられるのがいちばんいいようにも思えますが・・・。 |
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社労士 : 「齋藤」 |
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とてもいいご意見ですね。しかし、ここで、注意しなければならないいのは、もし、離婚している母親にひきとられるとしたら、上記の年金は支給停止となってしまうのです。これは、生計を共にしていなかった(離婚していた)片親にひきとられるならば、遺族年金はその期間は支給しないという法律に基づくもの(支給停止)です。 |
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新入社員 : 「翔太」 |
では、まもるが引き取った方が経済的には優遇されますね。 |
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社労士 : 「齋藤」 |
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ところが、まもるは双子の直系親族ではないので、双子を養子にすると、上記の年金は支給されなくなってしまいます(失権)。「支給停止」と「失権」の違いは「支給停止」はその状態がなくなれば、また支給は開始されるが「失権」はその状態でなくなっても、もう年金の受給権は消滅しているのでもらえないということです。 |
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新入社員 : 「翔太」 |
では、双子が遺族年金を受け取るには、いったいどうしたらいいのですか? |
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社労士 : 「齋藤」 |
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そうですね。まもるには期間限定の里親に(事実上の養子と見られないよう)なってもらうのがベストかもしれません。また、もし、双子の母親が離婚していなければ(籍がはいったままであれば)子供のいる母親として、遺族厚生年金¥514,100に遺族基礎年金(金額は母と子二人)¥1,242,900の計1,757,000と遺族年金額はさらに増えます。
また、妻は子供が18歳の年度末になると遺族基礎年金は失権(124万円はなくなる)しますが、厚生年金から中高年の寡婦加算として¥591,700が加算されます。これで、再婚しなければ、自分の老齢年金受給年齢(概ね65歳)まで。年額1,105,800円受け取ることができます。ですから、母親が家を出ていても籍が残っていることが一番有利な遺族年金の受け取り方でしょうね。 |
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新入社員 : 「翔太」 |
そんなに国からもらえるのですか?年金制度ってすごいですね。 |
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社労士 : 「齋藤」 |
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最終回前の話なのでドラマの最後はどうなるのかわかりませんが少なくともドラマはそんな子供の養育費や生活費が国の公的年金(遺族年金)で賄われるなどと言うこととは無縁のお話で終わるのでしょうね。 今回は社労士的な視点でドラマを見てみました。 |
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新入社員 : 「翔太」 |
今までは、ただ漠然と見ていましたが、年金は社会のセーフティネットとして、老齢年金ばかりではないことがわかりました。ありがとうございました。 |
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